火曜日の思索メモ

思ったこと、考えたことの記録です。

女子医学生の海外流出

朝のニュースで受験の話が出ていまして。不正入試が発覚した大学の受験者数が激変した(当たり前だ)そうですが、それは話の枕に過ぎなくて、本題は東欧の医学部を目指す女子受験生が増えているという話でした。

以前、何かで旧ソ連(ロシアだったかな?)では、医者=高給取りというイメージがなくて単なる職業の一つであり、だから女医も珍しくないという話を読んだ覚えがあったのですが、なら旧共産圏の東欧も女性医師は珍しくなく、女性というだけで不利になる環境ではないのかな?と思いました。

ここでアメリカやイギリスの医学部を選ばなかった理由はなんとなくわかる。両国とも医療サービスが新自由主義経済に飲み込まれて久しいですものね。

 

保険会社は経営からの回答と医療人としての使命との間で板挟みとなって、アメリカで医師の自殺率が高いことは有名な話だし。


日本人留学生を受け入れることは、東欧圏の大学側にもメリットがあるそうで。ハンガリー側の大学職員が
「日本人を受け入れることは多様な文化を知ることはできるというメリットがある」
と応えていたけれど、文化面だけでなく経済面でもメリットがあるのでしょうね。


受け入れ態勢は整っているとはいえ、医学部への留学はかなり厳しいようで(向こうの大学は求める基準を満たさないとどんどん落第させるし)、同時期に入学した学生のうち残っているのが取材を受けた女性一人というあたりに厳しさが現れていますね。


授業全てが英語というだけで英語が母国語ではない日本人にはハードルが高い。それも日常会話ではなく通訳でも苦労する医療英語。取材を受けていた女性が


「日本にいた頃は試験前に学校に行きたくないと思ったことなどなかったんです。でも、こちらに来たら、試験前は本当に学校へ行きたくなくて泣きました」


留学に挫折した日本の大学を再受験すると素直に日本のだいがくに進んだ時よりも合格率下がるのですね。
留学することは、そのリスクを受け入れることでもあるのです。でも彼女達は行く。また留学を終えて日本へ戻ってきた女性が言う。


「本当に戻ってきて良かったのか悩んでいるんです。あのまま向こうで働き続けた方が良かったんじゃないかって。向こうにいれば結婚して子供を持っても働き続けることができます。ですが、今の環境で同じことが出来るかどうか」


医師としてのキャリアを積みつつ、家庭人としても充実した生活を送る。東欧の病院ならそれも可能です。


3時間待って3分受診と揶揄されることもあるけれど、それでも当日病院に行って当日診てもらえることは世界的に見たらもの凄く恵まれたことなのですよね。


しかも日本の医療費は質に比べたら、もの凄く割安です。(外国人の不正受診が話題になるのは、それだけ日本の医療システムが外国人には魅力的なことの裏返しです)


その素晴らしい医療システムは現場の人達の負担のうえに成り立っているということを知らない人が結構多いですよね。


そのことを知らないというのはもの凄く危険なことではないでしょうか?私は医学部入試不正問題というのは、本質は医師の労働問題だと思っていて、医師の過重労働を長年放置し続けたツケがああいう形で現れたのだと思っています。


医師と音楽家は、別に日本でなくても仕事は出来るのですよね。伝統的にユダヤ人に医師と音楽家が多い理由が、長年迫害され続けてきた彼らにとって、どこに行っても食べていける職業に就くことは当然のリスクヘッジなのだから。


今のままの労務環境は続くなら、女性だけでなく男性医師も国外へ流出してもおかしくないですよね。それがグローバル時代なのだから。


貴重な日本の医療システムを守る為にも、私達はもう少し医療関係者の労務環境を気にするべきではないでしょうか?