先日、成年後見人制度と家族信託についてのお話を聞いてきました。
講師の村山さんが成年後見人なんて仕事にならないから関わる気なかったのに、台東区の依頼で区の無料相談会に出ているうちに、23区の中でも高齢者比率の高い台東区民の切実悩み。
親が認知症になって財産を管理できないのだけど、委任状がないから親の財産を子供の管理下に置くことができないし、そもそもどこにどれくらい親の財産があるのか子供にも分からない。
認知症の親を安心して託せる施設が見つかり、老後の為にと親が蓄えた貯金があるので施設に入居する為の費用を賄えたとしても、その費用を銀行から引き出せないので施設に支払うことができない。
こういう具体的で切実な悩みに応えているうちに成年後見人と家族信託を専門とする司法書士となった方なので、凄くリアリティがあって面白い講座でした。
成年後見人と家族信託それぞれの違いも、大変分かりやすく伝えてくれたので、なるほど、なるほどと頷きながら聞いていたのですが
「何か、ご質問はありますか?」
と、たずねられた時、一番最後に出た質問に大きく頷いてしまいました。
「どうやって、それをしてくれる人を見つければいいんですか?」
それ、大事!首都圏の人にとっても切実な悩みですが、家族が地方にいる人にとっては、更に切実な悩みでしょうね。
なにせ、成年後見も家族信託もそれを専門としている人は、まだ少ない。
私達は、資格を持っていれば誰でもその仕事が出来るだろう、と思ってしますが、司法書士さんも弁護士さんも、税理士さんも、それぞれ専門分野と得意分野があるわけで、資格を持っている=経験がある、ではないわけです。
骨折した時に、慌てて病院を探しますが、いくら慌てていても内科に行く人はいませんよね?
医者の方だって
「国家試験を受ける為に、一応全部勉強しましたけれど外科は専門外です。しかし、どうしてもというならやりましょう」
とは緊急対応時以外は言いませんよね?
ですが、成年後見や家族信託を依頼する時にそれをやってしまうことがあるそうなのですよ。
まったく畑違いの分野を専門としている人に、その人がどんなことを専門として、どんなことが得意分野なのか調べもせず、資格を持っているから出来るだろう、と頼む。
専門家を依頼するほど切羽詰まっている時に、これをしてしまうとどうなるかと考えると、もの凄く怖い。
やはりこれは、「今は、まだ必要ないんだけど」ぐらい余裕のあるうちに
「骨折だったら、あそこのお医者さんがいいよ。いい理学療法士も紹介してもらえるから、リハビリの時も安心だし」
レベルの専門家を探しておいて、もしもの時に備えた方がいいのでしょうね。
懇親会の時、村山さんがおっしゃっていたのですが
「相続は、ない人の方が揉めるんです。余裕がある人は、あらかじめ専門家に相談して必要な手を打っておくから、それほど揉めない。
『まさか、そんなことが』と思って何もしていなかった人達が、その『まさか』が起こった時に揉めるんです」
リスクヘッジを考える人は、あらかじめリスクに対して対策を施しておくから、ということでしょうか。
そんなことが起こるなんて思わない。起こる可能性すら考えたくない、と思う人も多いのでしょうね。
村山さんの
「成年後見も家族信託も、どういうものかを知ったうえで、家族で話し合って、どちらも選択しないというのもありなのですよ。
でも、知っていて選択しないというのと、知らないでいて選択できなかったというのは違いますよね」
という言葉に大きく頷いてしまいました。知識は身を守りますよね。
知ったうえで、じゃあ、自分はどうするのか?と考えるのが知識という武器の使い方なのでしょうね。
村山さん、成年後見について本も出されているそうで、これから読んでみようかと思っています。
それにしても任意後見人、取り消し権がないというのは怖いなあ。まあ、これからの法改正で変わっていくかもしれないけれど、お試しができないというのは依頼者との相性が悪かった時に不協和が生じないのかな?