この頃だんだんとamazonの負の面について語られることがふえましたね。
同業者の楽天と比べるとわかりやすい。楽天が、330億円を超える法人税を納税し、一方、アマゾンは10億円強の法人税を納税する。その差は320億円。
アマゾンは、その差額を新しい事業の開発費用や、現行サービスの値引きの原資、さらには従業員の給与の支払いなどに使えるのだから、圧倒的に有利な条件で事業運営を進めることができる
アマゾンジャパンが決算公告で発表している899億円と、米アマゾンが年次報告書で発表している8700億円の差異はどうやって生まれるのか。
財務省出身で、現在は東京財団で研究主幹を務める森信茂樹はこう話す。
『アメリカ本社と日本法人の間におけるアマゾンの税制のスキームは、コミッショネア契約と呼ばれています。コミッショネア契約とは、本来なら、アマゾン本社が行う日本国内での物流業務などの補助的な業務を日本法人が代行することに対し、アマゾン本社が日本法人に委託手数料を支払うという意味です。
仮にアメリカ本社が日本法人に全売上高の10%を手数料として払っているとすると、決算公告と年次報告書の差額が説明できます。このスキームを使えば、日本法人の売上高と法人税を大きく圧縮できます』
まだamazon礼賛記事が多かった頃だと思うけれど「逃げるは恥だが役に立つ」(原作の方です)を読んでいたら、ヒロインが重い荷物を持ってヒイヒイ言っている時に契約婚の夫の同僚と出くわして荷物を運ぶのを手伝ってもらう、という場面がありまして。
「通販利用しないんですか?便利ですよ」
「ああ、そうですよね。でもamazonって税金を払ってませんよね。なるべく国にお金を納めてくれるところにお金を使いたくて」
という会話に経済誌では、あまり取り上げないamazonの法人税問題を少女マンガではヒロインが口にするのか、と思いました。
国の税収が減るということは公共サービスの縮小に繋がるから、家計管理を任されている従業員の立場としてヒロインがより合理的な選択をすることはおかしくはないのですけどね。
租税回避については東洋経済でも解説されていましたっけ。
租税回避という言葉がある。アマゾンなどの国際IT企業が、世界中に遍在するタックス・ヘイブンという低課税地域や、各国の税法の抜け穴などを巧妙に組み合わせ、納税額を少しでも減らそうとする節税手段だ。
そうした国際IT企業などでは、百人前後の大人数の税制度の専門家をスタッフとして抱え、租税回避へと邁進する。
『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』によると、米アマゾンにも80人からなる税金対策部がある。
会計や法律の専門家である彼らは、その知識を駆使し、アマゾンが払う税金が少しでも安くなるように知恵を絞り、その見返りとして高額の給与を手にする。
租税回避は、違法行為である脱税とは違い、一応、法律の条件は満たしているのだが、その目的は、各国の税制に従って正しく納税するということではなく、各国の税制の抜け穴を積極的に探し、合法的に納税を逃れることに全力を尽くすことにある。
租税回避が違法でないのなら、なぜここで取り上げる必要があるのか。
租税回避と脱税とは紙一重であり、金融機関や会計事務所、コンサルタントが生み出した複雑怪奇なスキームを使って、納税額を法律の枠で認められたぎりぎり最小限に押し込める。
しかし、租税回避や節税、脱税の境界は極めてあいまいであり、所得や利益を海外にあるタックス・ヘイブンに逃がし、本来なら、納めるべき税金を払わないで済ませているのがアマゾンを含むGAFAに代表される国際企業なのだ。
そうした国際企業が応分の税金を支払うことから逃れるツケを負わされているのが、中所得や低所得の市民である。
タックス・ヘイブンなどを舞台とした租税回避によって、富める企業はますます富み、貧する者はますます貧するという負の構図が生まれているからだ(志賀櫻著『タックス・ヘイブン』)。
こういう税の盲点をついた企業の租税回避については日本だけでなく、各国頭を痛めてまして。(この件について国際会議が開かれる程度には、悩みの種)
税収不足による公共サービスの低下で不利益を被る市民と利益を得る企業関係者という構図は各国共通ですね。
amazonなんて設立当初から租税回避の姿勢が明確だからなあ。
アマゾンの租税回避を知るうえで大切なのは、この考え方が、アマゾンのDNAに深く刻み込まれている、ということだ。
税金によって作られる道路や上下水道、病院などの社会インフラを活用しながらも、あらゆる手を使って納税額を最小限に抑え、その分を事業発展に使うという“フリーライダー(ただ乗り)”のDNAだ。
ベゾスが繰り返し語るアマゾン誕生物語では、ウォール街の金融機関を辞めてアマゾンを起こそうと思ったベゾスが、祖父の自宅のあったテキサス州で車を借り、マッケンジーがハンドルを握り、助手席でベゾスが事業計画書を書きながら、西へと向かった。そして、マイクロソフトなどの本社などがあるため優秀なIT人材が豊富で、書籍の取次の大型倉庫にも近いという理由でワシントン州シアトルを創業の地に選んだ──ことになっている。
しかし、1996年の米ネットメディア《Fast Company》でのインタビューで、創業の地をシアトルに選んだ理由を尋ねられ、ベゾスは税金対策のためだったと答えている。
私の知る限り、ベゾスがアマゾンの税金対策について率直に語った唯一の機会である。
まだ株式を上場したばかりのこのころ、後年にアマゾンの租税回避の問題が、アメリカ国内だけでなく、世界各国を巻き込んだ大問題に発展するなど、ベゾス自身も想像していなかったため、警戒感が薄く、うっかり口を滑らせてしまったのだろうか。
しかし、このネット時代、過去の発言の多くは、時間を経てもネット上に残り簡単に手に入れることができる。
まあ、経済誌はビジネスモデルとして優れているか、いないかが先に立って、そのビジネスモデルが社会にどういう影響を与えるのかについては後から考えるのかもしれませんが。
川崎市のふるさと納税に対する広告とあわせて、個人が自分の利益の為に行ったことが回り回って自分に損害を与えるいい例だな、と思って見てます。
もっとも公共サービスが低下しても不自由がない層にとっては気にすることはないことかもしれませんが。