まあ、でもメディア受けするフェミニストはキッズラインのような性差別はとりあげないんじゃないかな、と思ったりして。(´-ω-`)
東洋経済オンラインで新規創刊されたフェニミズム雑誌についての記事が載っていたけれど、このフェミニズム専門誌がキッズラインの件を自誌で取り上げるか?というとあまりそうは思えない。
なぜなら、この発行人が「日本のフェミニズム since1886 性の戦い編」の編集者だから。
発行人の松尾社長について、セックスワーカーの健康と安全の為に活動するグループSWASH代表の要有紀子さんが
「フェミニズム専門誌「エトセトラ」を発行する松尾亜紀子社長は、売防法制定運動をした矯風会を称え買春撲滅を希求する「日本のフェミニズム since1886 性の戦い編」の編集者ですが、様々な立場の女性達の闘いや抵抗を包摂するリブのような時代を共に作れる事を願ってます。」
と、ツイートしてますが、願うけど期待はしていないんじゃないかな?という気がします。
「エトセトラ」に関わるような人達が様々な立場の女性達の闘いや抵抗を包摂するようなことはないだろう。でも願っている。そんな感じのニュアンスをうけます。
つまり松尾さん達が考えるような「正しい」フェミニズム以外のフェミニズム。
異なる立場の人が求めるものや、それを得る為の闘いを、それもありだと容認してもらえるか?ということへの疑問。
こういう印象を受けるのは続く要さんの言葉からです。
『日本のフェミニズム since1886 性の戦い編』では、売防法制定に寄与した矯風会や市川房枝らがまっとうなフェミニズムとされ、当時制定に反対し、国会でも参考人として発言した吉原で働いていた女性たちの抵抗運動はフェミニズムとして評価されていません。
いまも歴史解釈が歪曲されたままの状態です
フェミニズムに関わるすべての人の責任として共有していきたいです。これは現在のセックスワークの問題と地続きの問題です。
1956年頃当時売防法反対運動が当事者らによって盛り上がって国会で議論されていた頃は連日、売防法反対集会などが開かれたりいろんなグループや活動があったけど、当時その中にいた人にインタビューしたいけど、フェミニズムの歴史と銘打った本が出ることで、なかったことにされていくのが本当に残念。
これは近代史に興味があって色々読み漁った人間からすると凄く納得できる言葉。
池波正太郎もエッセイで売春防止法が制定された時、東京都の保健師が
「せっかく検診を受けられるようになったのに!」
売春防止法が出来たことで、娼婦達が闇にもぐり、検診を受けられなくなることを
予想して怒り狂っていたことを書いてましたね。
これだけでも売春防止法について、色々な考え方があったことがわかる。
だからだから私は「日本のフェミズム」は評価できない。
左右問わず、自分の思想の為に都合よく歴史を語る本が好きじゃないからです。
「日本のフェミニズム」は 日本初の女性団体で 婦人参政権運動を始めた矯風会を再評価しました。
矯風会=保守 という90年代からの思考停止状態から 一歩前に進みたいという思いです。
GHQに言われるまで公娼制度続けてきたこの国の性文化を、自分の言葉で思考するための本。
と、書かれていますが、日本のフェミニズムの負の面、婦選獲得同盟は自らの活動の為に積極的に戦争に協力したこと。
そのことに対しての批判もあったこと、矯風会とは異なる形で婦人参政権活動や廃娼運動を行った人々もいたこと。そういうことに触れていない。
だから、要さんにこういう反論をされているのでしょう。
たしかに矯風会は婦人参政権運動に関わっていますが、婦選獲得同盟は、矯風会、吉岡彌生(女子医大の創設者)、市川房枝ら、戦争協力者の集団であり、吉岡彌生も市川房枝も戦後公職追放されています。
吉岡彌生はナチス礼讃者。このことに触れずに、婦人参政権運動だけを取り上げるのは無理があります。
矯風会は日露戦争以降、一貫して戦争支持の姿勢を貫き、軍部に協力し、満州事変では海外の婦人団体の批判を無視して関東軍を支持しました。また、戦時において純潔運動や風紀粛清運動を担いました。
また、矯風会は宗教的道徳団体であり、人権運動ではないし、婦人運動でもありません。これは平塚らいてうらや与謝野晶子、宮本百合子らが批判している通りです。
そのため、根底にあるのは売春婦に対する蔑視であることは伊藤野枝が批判している通りです。
廃娼運動側は、「娼妓たちが言ってることはウソなのだ」というキャンペーンも展開しました。
矯風会初代会頭の矢島楫子においてはら言動の不一致(自らの矛盾は死ぬ直前まで隠して、社会の風紀の乱れを批判し続けた)もみられます。
河出書房新社の『日本のフェミニズム』は中の章でも書き手によって書かれていますがきっちりと『矯風会中心の歴史観』であり『矯風会に軸を置くフェミニズム観』なので、ジェンダーを学ばれる学生の方はそこをぜひ念頭に置かれてみてはいかがでしょうか。
併せて読むのにおすすめの本は山家(やんべ)悠平さんによる『遊郭のストライキ 女性たちの二十世紀・序説』(発行・共和国)です。
この本には、日本の娼妓たちが自分たちの労働環境改善を求めていかに闘ってきたか、また当時の女性による『廃娼運動への批判』などについての史実を無視すること無く書いてあります。
「『新宿「性なる街」の歴史地理』(三橋順子著、朝日選書)でも、『赤線』従業婦組合の売防法反対運動について書かれています。
矯風会って、ようは山手のお嬢さんなんですよね。山手のお嬢さんフェミニズム。
こういう人達が、自分とは異なる立場のフェミニストにどういう態度を示すのかについては、山崎朋子さんがご自身の自伝の中でさらりと書いていましたね。
山崎さん、「サンダカン八番娼館」で世に知られるようになってから交流するようになった女性活動家達の自分に対する態度に閉口することが多かったみたいで
「都会のお嬢さんは、私のような地方の国立大学出身者が注目されたことが気に入らなかったのでしょう」
と書いてましたね。
矯風会的な考え方だと、貧しさゆえに海外に流れていかざるを得なかった娼婦達(からゆきさん)の話なんて隠しておきたいことでしょうしね。
歴史好きからすると、からゆきさん達がまだご存命のうちに山崎さんが聞き書きしてくださったくださったことは、貴重な記録を残してくださって、ありがとうございます!と感謝しかないですけどね。