火曜日の思索メモ

思ったこと、考えたことの記録です。

鳥山明先生の死が証明した文化の力

 鳥山明先生の訃報に際し

「『失われた30年』と言われているけれど、唯一世界を舞台に成長できた分野がアニメとマンガとゲームなんだよね」

togetter.com

「この分野の日本の強さって『国が違うもの同士の共通言語として日本語が使われる』ということからも分かる」

 という言葉を見かけて、そういえばマンガって地方からの人材獲得に熱心な業界だから、教育格差、地方格差の大きいこの国で(共通テストの都道府県別平均点全国ランキングの上位が軒並み二大都市圏で、色々なことが読み取れると話題になっていましたよね)数少ない才能と努力だけで道が開ける業界なんですよね。もちろん他にも環境要因はあるでしょうけど、他の業界に比べては少ない

togetter.com

 アニメやゲームについては、どうなのかよく知らないけれど、漫画については「北海道にマンガ図書館を!」というシンポジウムの中でパネリストさん達が

「各県ごとに、その県出身の漫画家さん達の原画が観られる図書館があればいい」

 という発言をしていた時に

「その地方にいるから描ける作品というのはあるんですよ。これは出版社の方から聞いた話ですが、出張編集部で九州に行った時

 『こんな凄い作品を描ける子がいたんだ!』と驚愕したそうです。もちろん投稿は随時受け付けているのですが、現地に行って出張編集部を開くと『凄い!凄い!』と思う子が何人もやってくると。

そういう現地に行かないと分かることもあるんです」

 というお話をお聞きしました。能登の震災に対して

「過疎地域に対して税金を投入する必要があるのか?」

 という声が震災後、早々に出てきたこの国で、地方にいることが弱みではなく強みになる職種ってどのくらいあるのでしょうね?

jbpress.ismedia.jp

 世界配信もされた「鋼の錬金術師」の作者の荒川弘さんは「人よりも牛の方が多い」「地域住民、皆顔見知り」という地域の出身で、自らの農業体験も踏まえた作品も発表してますけどね。(「百姓貴族」海外でも人気ですものね)

 

 経済は、この30年弱体化し続けていると言われているけれど、文化は世界を相手にファンを広げ続けている。

 この国の文化戦略について面白いなあと思うことがあるのですが、霞が関で国を動かしている人達が「この国の国益の為に~」とやっても成功するとは限らないけれど(クールジャパン戦略の屍累々に限らず、国が旗を振って成功した事例って思い浮かばないのですよね。戦前でも成功事例ってあったかな?)

その反面、日本人が自分達が楽しむ為に「これ好き!楽しい!」をやっていると、それを観ていた異邦人の方から「自分達も好き!楽しい!」とやってくるのですよね。

そのあたりは浮世絵の時代から変わらないなあと思うのですが、「これが好き!」でやって来ると異邦人であろうと構わず

「貴方達もこれが好きなの?いいよね~!」

 と共通言語で盛り上がる。

「こっちが好きなら、これも知ってる?これも面白いよ!」

「え?何?知らない、知らない。教えて、教えて!」

 とファンを増やしていく。サブカルだろうが、メインカルチャーだろうが、この傾向って変わっていないと思うのですよね。

 その文化に対して強い愛を持っている人達が、その面白さを語ると、それまで面白さを知らなかった人達が引き込まれていく。

 これ「文化は金になる」が先に立って、文化を手段をしてしまうと駄目なのですよ。文化を手段として国益に繋げようとするのなら、エカテリーナ女帝並みに見識があって、豪勢に金を遣える胆力がないと。

 日本で文化で国を変えたえらい人って足利義政さんくらいだけど、あの人は将軍としての評価は低いし、守護大名や側近達が

「どうぞ、どうぞ。政治に口を挟まないのだったら好きなだけお好きなことをなさってください」

 をやっただけのような気がするのですよね。どちらかというと豊臣秀吉の方がスタンダードなのではないかと。

豊臣秀吉千利休を許さなかったように、この国の政治家は文化を自分の支配下におきたがるし、文化が自分の支配下におけないことを許せない。

 文化を手段として使いたがるけど、文化は手段として使うには、どうすればいいのかも分からない。

 結果的に文化が金になることと、金を得る事が目的で文化がその手段にしか過ぎないというのは違いますからね。

 その違いが分かっている業界は伸びて、違いが分からないところは没落していったのじゃないかなあ。

 企業文化というくらいだから、企業の風土も文化の中に入りますからね。